東京家政学院大学 Tokyo Kasei Gakuin University

世の中が変わる、家政が変える

ニュース・トピックス

【学長メッセージ】新入生のみなさんへ(2018年度大学入学式告示)

2018/04/03

新入生のみなさん、編入生のみなさん、入学おめでとうございます。
また、ご家族、関係者のみなさま、おめでとうございます。

 

本学は今年度、二学部五学科、つまり現代生活学部が現代家政学科、生活デザイン学科、食物学科、児童学科の四学科から、また人間栄養学部人間栄養学科の一学部一学科としてそれぞれ新たに歩み始めます。新入生のみなさんは記念すべきその一期生となります。

 

さて、本日、私はみなさんに、ひとりのアメリカ人女性についてお話しします。

 

名前はSarah Marie Cummings、ペンシルベニア州に生まれ、1991年、留学生として来日、93年長野冬季オリンピックにはスタッフとして参加しました。現在は2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の文化・教育委員会委員もされています。
ちなみに、この委員会には本学児童学科の杉野学教授が加わっています。

 

セーラさんの現在の肩書、「株式会社文化事業部代表取締役、NPO法人桶仕込み保存会代表理事、利酒師」と同委員会資料では三つを挙げています。
そのひとつ、「NPO法人桶仕込み保存会代表理事」としての目標は、「桶ソサエティをめざして」とのことです。
「桶ソサエティ」とは何か。ホームページにはこうあります。
「『桶』を基本のところで支える林業家、そして桶師たち、桶を使う醸造関係者、そして桶でできた酒や味噌、醤油などを味わう一般の人びとをつなぐ」。
「つなぐ」役割。つまり「桶」を巡る人や仕事、組織などの関係性を構築し、「ひとつの社会(“Society”)」を創り上げると謳っている訳です。

 

前置きが長くなりました。
私がセーラさんを知ったのは、雑誌『日経ウーマン』主催の「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」で2002年大賞受賞者となったからでした。その年8月末、当時セーラさんの活動拠点であった長野県小布施町でお会いしました。「忙しいから午後1時から少しだけ」で始まったインタビューは、そろそろ日が落ちようとする、肌寒い時刻まで6時間近く続きました。

 

その時、セーラさんが語ったこと。印象深いひとつに「日本は地球の裏側からでも行きたい国。日本人はそれを分かっていない」、があります。小布施町は葛飾北斎ゆかりの地。しかし、日本人がやらないから私が、と言ってセーラさんは1998年「第3回国際北斎会議」を誘致、世界中から北斎研究者など400人ほどが集まる機会をつくっています。
では「木桶」は?「桶は、シンボル。日本の木の文化を残していく」と言い、そのために木桶を造る者、木桶で酒を醸造する者、味噌や醤油を造る者、さらにそれを消費する者、それら一連の「つながり」を創ることが、「日本の文化」を残すことだと言います。

 

今、私たちの身の回りで起こっていること。それは人と人、労働と労働の「つながり」が遮断され、継続性がなくなって「伝統」が消滅して行くということです。セーラさんの狙いは、「伝統」を社会の「つながり」の中でビジネスとして再構築する、にあります。

 

アメリカ人であるセーラさんの活動から、新入生のみなさんに考えていただきたいこと。
それは、みなさんがこの世界に生を受け、大学で学び、社会に出て行くことで、何を「つなごう」とするかです。みなさんが学ぶ「家政学」を、私は「生命(いのち)のつながり」を対象とする学問領域と理解しています。みなさんが4年間、「家政学」を通じ、また個々の専門領域を学んで、何を得、卒業するのか、それに拘っていただきたいと思っています。

 

セーラさんは繰り返し「意志あるところに道は拓ける(“Where there’s a will, there’s a way.”)」と私に語りました。それは、アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーンの言葉ですが、彼女の口からは「意志を持って道を拓け」と私たちの背中を押すように聴こえます。

 

新入生のみなさんがこれから学ぶ東京家政学院大学は、90年と少し前、まだ女性の社会参加が大きく制限されていた時代に、「意志を持って道を拓いた」一人の女性、大江スミによって開設されました。その大学で学ぶことを通じ、みなさんがこれからの社会に新しい「生命(いのち)のつながり」を創造されるよう期待しています。

 

セーラさんはもうひとつ言っていました。
「行動しながら考えて行きたい。やってみれば、不可能なことはない」

 

入学おめでとうございます。


2018年(平成30年)4月3日(火)
東京家政学院大学学長 廣江 彰

戻る