東京家政学院大学 Tokyo Kasei Gakuin University

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【学長メッセージ】新入生のみなさんへ(2019年度入学式告辞)

2019/04/03

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。
新入生のご家族、関係者のみなさま、おめでとうございます。


入学という晴れやかなこの日、私はみなさんに二つのお話しをします。
ひとつは新入生のみなさんにとって新しく、しかし厳しい時代が待ち受けていることを、もうひと
つは、大学という新しい環境が、みなさんご自身の努力と他者との協働によって、「希望」を創り
出す場と時間である、ということです。

 

みなさんを待つこれからの時代、社会変動という「荒波」の到来が予見されています。
ある雑誌の特集に、こんな副題が付けられていました。
「-政治・経済の混乱の先に何が待ち受けているか-」*1

 

国と国との衝突、民族と民族の衝突、人種や社会階層間での衝突など、これからの社会、あるいは
世界は解決の難しい課題をますます貯め込み、みなさんの前に壁となって「待ち受けている…」か
もしれません。
とりわけ、私たちが日ごろ馴染んでいるデジタル技術は、予想をはるかに超える発達が注目されて
います。その雑誌論文では、AI(Artificial Intelligence)、すなわち人工知能が「ホモサピエンスを
時代遅れの存在にしてしまうだろう」*2 とさえ予測しています。

 

「ホモサピエンス」、私たち人間が「時代遅れの存在」となる。ずいぶんと大胆な予測に思えます
。しかし、それが現実的可能性を帯びるのは、今は人間が担う職業の多くが急速に人工知能に取っ
て代わられ、消失する現実が私たちの視界に入って来ているからです。

 

たとえば自動車。人工知能による自動運転技術が究極の発展段階に到達すると、運転という職業は
不要になる。マイケル・オズボーン、オックスフォード大学准教授は、2013年の論文で、その10
年後には自動車の運転(Driver)が98%の確率で人工知能に置き換えられるとしています。*3

 

二つ目のお話しです。それは、みなさんがダイナミックに変貌する時代のさなかを生きていくこと
に、私が強い羨ましさを抱いている、ということです。
どうしてか?「変化」の時代に生き、学び、働くことが大変な「幸せ」だと思うからです。
これから大学で学び蓄える「力」、みなさんが自分のものとする知識と知恵を、「待ち受けている
」厳しい時代の中で実際に発揮する、というやりがいが実感出来るからです。

 

みなさんの前に立ちはだかる壁は、それを超えようと願い、努力する人にしか見えません。幸い、
先の論文では、たとえば建築家、保育士・教員、デザイナーやパタンナー、栄養士などの職種は、
人工知能で置き換えられる確率がほとんどゼロとされています。

 

では、「なくなる仕事」と「残る仕事」はどこが分かれ目なのでしょうか?
マイケル・オズボーン准教授は、高性能のコンピューターも、経験に基づいて発揮される人間の能
力、脳に貯め込んでいる「知識の深さ」には及ばないと語っています。
「なくなる仕事」と「残る仕事」の分かれ目は、職種自体にではなく、実はその仕事が本質的に求
める創造性、関係性の中での臨機応変な対応能力といった、仕事の特性にかかわるからだというこ
とになります。みなさんが本学で学ぶことの本質は、そこにあります。

 

しかし、みなさんが本学で学び、「知識の深さ」を構築しなければ、仕事は人工知能で置き換えら

れないとしても、「分かれ目」をみなさんの側には引き寄せられないことになります。
そのために、みなさんが心に留めることはたったひとつ、「努力」ということです。

 

イギリスで出版された“BIOGRAPHICAL PORTRAITS”で「日本における現代家政学の先駆者」と記
述されている一人の女性、大江スミによって百年近く前に開設された東京家政学院大学で、これか
ら新入生のみなさんは学ぶことになります。
みなさんが厳しい時代を生き、自ら、また他者との協働によって目の前に立ちはだかる壁を超えて
「良い仕事」に巡り合い、楽しく、幸せに暮らして行こうと努力し続けることを、私たち教職員は
心から応援します。

 

大学という新しい環境での今日の第一歩をお祝いし、ひとりの若い女性が16歳の高校生であった時
の言葉を贈ります。

 

「どのような状況でも、結果を左右する力は自分にある」*4

 

あらためて、入学おめでとうございます。

2019年4月3日(水)
東京家政学院大学学長 廣江 彰

*1“Foreign Affairs Report”vol.45
*2 同上
*3 Frey,C. B.and Osborne,M.A.(2013).THE FUTURE OF EMPLOYMENT―HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO
COMPUTERISATION?―
*4 岡崎玲子『レイコ@チョート校』(2001年、集英社新書)

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