理事長メッセージ

 東京家政学院は、「人のしあわせにつながる家政学」を追求しながら、多年にわたり教育と研究を通して社会に貢献し、まもなく100年の節目を迎えます。

創立者大江スミは、長崎に生まれ、東洋英和女学校(現在の東洋英和女学院)、女子高等師範学校(現在のお茶の水女子大学)を経て、イギリスに留学し、帰国後の大正12年(1923年)に「家政研究所」を開設、大正14年(1925年)に「東京家政学院」を設置しました。

 家政学の先駆者である大江スミが目指したのは、知(Knowledge)、徳(Virtue)、技(Art)を兼ね備えた心身ともに健全な良き社会人・家庭人の育成です。本学院が設置する大学及び中学校・高等学校にはこのKVA精神が脈々と引き継がれています。

 いま人類社会は、地球環境問題に加えて、新型コロナウイルス感染症の世界的流行という未曾有の事態に直面しています。大都市に機能を集中させ、グローバルに経済活動を展開することで、豊かさと効率を追求してきたこれまでの歩みが問い直されているといって過言ではありません。

 このような状況にどう対処すれば良いのか、答えを見出すのは容易ではありませんが、人の暮らしや生き方に深く関わる「家政学」こそ、この問題の解決に重要な役割を果たすべき学問分野であると考えています。また、多様な背景や価値観を有する人々が協働する社会をつくりあげるために、中等・高等教育段階における女子教育は依然として重要です。

 私たちは、学生・生徒のために何が最善かを常に考え、学生・生徒にとって最良の学びの場の提供に努めながら、創立以来の歴史と伝統の上に、家政学と女子教育の新たな未来を築いていきたいと思います。

                                2020年7月

                                理事長 吉武 博通