家政学の新たな一面と出会うMIRAI
KEYWO

家政学と聞くと、あなたはなにをイメージしますか。
被服学、栄養学、住居学、保育。一般的にイメージされるこれらは、家政学のごく一部にしか過ぎず、本来の家政学は、
社会のあらゆるところに、人がより良く生きていくための
視点を投げかける可能性を秘めています。

食、住まい、ファッション、教育だけではなく、
ビジネス、地域社会、地球環境まで、
様々な領域の16のキーワードと家政学のつながりを、
専門家が解説します。

あなたが関心を持つ世の中の出来事やニュースは、実は家政学と深い関係があるかもしれません。
地球の環境問題から社会問題まで、世の中を良くできる学問。未来に広がる家政学のフィールドに触れてみましょう!

16のMIRAI KEYWORDをタップしてみましょう!

多文化共生

多様な人々が共生する社会を実現するカギは、「家政学」と「子ども」?

外国につながりのある子どもが増え、幼稚園や保育園でも多文化共生という言葉が身近になってきました。保育者は日々その子どもたちを支えています。
しかし、保育者が支えているのは子どもだけではありません。その背景には保護者の存在があり、生活があります。保育者はその生活の支援にも関わります。例えば病院について情報提供をしたり、役所の相談窓口を案内したり…。
家政学と多文化共生は一見つながりが少ないように見えますが、子どもというキーワードを間にはさむとその関係が見えてきます。家政学は、生活の質の向上と人類の福祉に貢献する実践的総合科学です。「家政学と○○」…つながりそうなキーワードをはさんでみてください。きっと、あなたの身近なところに家政学の世界が広がっていると思います。

和田 美香
児童学科
准教授
気候変動

地球の気候変動対策は、日々の「生活」を学ぶことから?

今、地球環境変動が将来の私たちの生存をも左右する大きな問題となっています。SDGsでも気候変動対策を目標として掲げています。この大きな問題を解決に導き、目標を達成するためには、私たち一人ひとりが「生活」に関する正しい知識と技術を身につけ、意識改革に取り組むことが必要です。
なぜなら、私たちの日々の「生活」が地球環境変動の原因の一つとなっているからです。衣食住の学びの中で、「つくる責任・つかう責任」を考え、地球に優しい「生活」とは何かを考え、その考えを実行するスキルを身につけ、そして社会の中で実践していく。大きな広がりをもつ家政学を学ぶことは、地球環境までを見据えた「生活」を学ぶことにつながります。

岩見 哲夫
食物学科
教授
こども食堂

子どもたちを貧困から守る「子ども食堂」の可能性は、家政学でもっと広がる?

子どもにとって楽しく食べることは身体的な健康のみならず、精神的・社会的健康を促進する生活の質の向上につながる指標です。しかし、子どもの貧困が顕著になるにつれ、食生活に与える影響について様々なことが明らかとなっています。具体的には朝食欠食や野菜不足など、子どもの食生活・健康状態に影響を与えることが懸念されています。
子ども食堂とは民間発の取り組みで、子どもが一人でも利用できる無料または安価な食堂のこと。現在は、共食の場・コミュニティの場にもなっていて、フードバンクなどの併用利用も行われています。利用者からは家庭での調理の変化や、楽しみが増えたという変化が確認されています※1。 社会における「食」提供の場面や仕組みを考えること、提供する「食」の内容を検討すること、それも家政学が社会のために果たせる役割の一つです。

※1 東京都におけるフードバンク手渡し提供サービス「フードパントリー」が子育て世帯の食生活へ与える影響 日本食生活学会誌 Vol.32 No.4 (2022)

米澤 加代
食物学科
准教授
再生可能エネルギー

再生可能エネルギーは、家政学的視点で見ると、これからの生活者の救世主になる?

前世紀まで幸せを象徴するお家(うち)のアイコンとは、暖炉であり、屋根の上の煙突でした。でも、21世紀に生きる私たちにとって、もはやそれはガソリン車と同様に時代錯誤とも言えます。現代のお家のアイコンは、屋根にソーラーパネルを載せて自律自足するスマートホームかもしれません。その新しい暮らしの在り方を支えているのが、家政の知恵です。再生可能エネルギーに託された希望は、生活者の視点に立った家政学の研究にも託されています。家政学は時代に合わせて進化しています。これからの生活者の救世主にもなり得る学問だと言えるでしょう。

半田 智久
現代家政学科
特任教授
建築・設計

人の暮らしを家政学の視点で見つめると、住宅や建築はどう変わるの?

建築・設計を学べる学部は、必ずしも工学系だけではありません。総合的な知識や技術が必要とされるため、近年、様々な観点から建築を考えることが求められています。
皆さんがこれまで学んだ家庭科では、衣食住を学ぶというイメージが強くあると思います。「住」は、そこに暮らす「人」、使う「人」に焦点が置かれます。そこで営まれる一人ひとりの様々な生活行為を組み立てて、それが一つの住宅や建築になり、地域全体へと繋がっていきます。
これが生活に密着した「家政学の建築・設計へのアプローチ」です。「人間の暮らしそのものを見つめる」という観点で建築・設計に取り組むことは、家政学から建築・設計を学ぶ魅力のひとつです。

深石 圭子
生活デザイン学科
准教授
アスリート食

一流のアスリートにとって「食」を学ぶことは、おいしいトレーニング?

一流のアスリートは、トレーニング効果を高めるための食事に関心が高いことが知られています。しかし、食事に気をつけても、最初からその種目で活躍できるアスリートはいません。トレーニングを支えたり、その効果を高めたりするための特別な食事ではなく、自分の身体に必要な食事を知っているのが一流のアスリートです。
つまり、アスリートは、その種目を始める前から食に関心をもっていたというよりも、トレーニングを始め、続けていくうちに、そのスポーツに必要な身体能力を知り、その能力を発揮する上で必要な食事への関心を高めていくのです。

江川 賢一
人間栄養学科
教授
アップサイクル

着られなくなった衣服などの不用品は、捨てる?リサイクル?それとも?

国内の衣服のゴミは、5%が再資源化されますが、95%は環境に負荷のかかる焼却や埋立処分になっています。そこで、廃棄物や不用品に手を加えて、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すというサスティナブルな方法、「アップサイクル」が注目されています。
例えば、古着を現代的な洋服やバッグ、ぬいぐるみ、インテリアグッズなどに再構築したり、アパレル企業では、売れ残った洋服に新たな「デザイン」を吹き込んで、新製品へと展開し始めています。家政学の被服構成学分野では、基本的なデザイン、計測、製図、縫製技術などを学び、世界中で模索している持続可能なものづくりの在り方を考え、実践する授業に取り組んでいます。

富田 弘美
生活デザイン学科
准教授
自分らしさ(ウェルビーイング)

「自分らしさ」ってなんだろう?「自分らしさ」はどこで見つかるんだろう?

「自分らしく」ありたいと願う人は多いのではないでしょうか。そこにあるのは幸せ(ウェルビーイング)を求める気持ち。これは人間だけが持つ強い思いです。「自分探し」なんていう言葉もありますね。思春期は「自分探し」の出発点です。私たちは生きていく過程で様々な「自分」と向き合っていくわけですが、その際、大きな役割を果たすのが、家族をはじめとする多くの人たちの存在です。
「自分らしさ」とは、大切な人たちとの出会いの中で育まれていく自分自身の価値のこと。人が生きるために必要な知識(Knowledge)や技術(Art)を学ぶ「家政学」。そこには、人が心豊かに幸せに生きるための心のありよう(徳性=Virtue)のヒントも詰まっています。

柳瀬 洋美
児童学科
准教授
空き家問題

空き家や空き地が増えてまちが衰退するのを防ぐ、家政学的な解決策って?

少子高齢化により人口減少が進み、高齢者が所有している住宅の大量相続時代がやってきます。相続の際に次の所有者や利用者へ引き継がれなければ、その多くが空き家、空き地となり、まちは衰退していくことが予想されます。
私たちができることは何でしょう。まず、空き家にならないように、家を適切に管理して次の世代へ引き渡す必要があります。空き家となった場合には、必要な人に引き継ぐためのマッチングが必要となります。また危険な空き家は取り壊しも必要ですが、利活用可能な空き家もあり、その場合はまちに必要な施設へ転用することも重要です。家政学を通して人と人、人とモノをつなぎ、より良い未来のまちを創造しましょう。

青柳 由佳
現代家政学科
助教
子どもの貧困

子どもの『貧困』と『学力低下』を解決するには?”人間の生活のよさ”に向き合うことから

「学力低下」という言葉があります。この現象は「全体の平均が下がった」のではなく「“勉強がしんどい”層と二極化した」ことで起きています。“勉強がしんどい”層からは“生活のしんどさ”も観察され、両者に相関関係があることが2000年頃明らかにされました。
青砥恭『ドキュメント高校中退』(筑摩書房 2009年)には、高校を中退した生徒たちの背景に、貧困の問題があることが描かれています。この問題に臨むには、教育だけではなく、福祉のあり方や政治、そして人間の生活の「よさ」を総合的・実践的に探究する家政学も巻き込んで取り組む必要があるはずです。「『人間らしい生活』をどう具体的に社会で保障するか」から考える必要があるのです。

小野 方資
現代家政学科
教授
循環型社会

今話題の「エシカルフード」をさまざまな視点から見てみると、見えなかった事実が見えてくる?

食事をするとき、食品を購入するとき、あなたは何を基準に選んでいますか?これまでにエシカルフードを選んだことはありますか?エシカルフードとは、地球環境、社会に配慮した食品のことで、オーガニックやフェアトレード食品、代替肉・ミルク、昆虫食等を指します。
では、環境や社会に良いのであれば、全てをエシカルフードと考えられるでしょうか?他にも、「それ以外の食品の必要性は?」「栄養価は?」「社会経済的側面は?」など、エシカルフードについて考えていく必要のある事柄はたくさん。そのためにはヒトにとって食はどのようなものかを知り、自分以外の方の食を考えられる力も必要になります。多角的に食を見る、そのような学びが家政学の中には沢山あります。

上薗 薫
食物学科
准教授
ヤングケアラー

ヤングケアラーって何が問題なの?仲の良い家族のお世話を頑張るエライ子じゃないの?

ヤングケアラーは、家族の面倒をみている「家族の中で若い」人ということです。「家族の中で若い」人はその家族の子ども、つまり家族の中で大切に育てられ、社会に出る練習をする役割を担う人のことです。つまり「ヤングケアラー」とは、そのような役割分担が崩れた、機能不全家族であることを表す単語といえるのです。
また、社会にある色々な福祉サービスが利用されていない、届いていないことも問題です。ただこの問題の難しさは、家族の世話を優先し学校や友人との交流を行わないことに、当事者であるヤングケアラー自身が不満を抱かないケースもあるというところにあります。誰も我慢していない、幸せな家族でいるにはどうしたらよいのでしょうか。

木村 文香
現代家政学科
准教授
インクルーシブ

私たちが生きる社会がオーケストラだとしたら、どんな音楽を奏でられるだろう?

より良い未来社会とは、どのような社会でしょうか。人々の多様な在り方を認め合い、尊重し、共生するインクルーシブ社会もその一つです。私は、音楽を通してその実現を目指しています。 もし社会というオーケストラがあるとすれば、一人ひとりが障がい、性別、年齢、国籍、宗教、文化と言った多様性を理解するKnowledge(知識)、その多様性に配慮した社会システムを構築するArt(技術)、そして理想社会を目指そうとするVirtue(徳性)によって、理想的な音楽(社会)が紡がれます。音は、環境からも聴こえてきますね。見えざる音(声)に心を研ぎ澄ませ、調和していくこと。インクルーシブ社会について音楽の体験から考えることも、東京家政学院大学の学びの一つです。

吉永早苗
児童学科
教授
シェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーと家政学がもっとつながれば、持続可能な地域づくりが実現できる?

空間をシェアするシェアハウス、移動手段のカーシェアなど、物を持たずシェアする時代がきています。インターネット上のマッチングプラットフォームを介し、個人のスキルや時間など活用可能な“資産”を囲い込まず、他の人にも活用可能にするサービスや経済の動きのことを、シェアリングエコノミーと呼びます。
2021年度日本におけるシェアリングエコノミーの市場規模は「2兆4,198億円」にも拡大し、世界中で広がりを見せています。若者がクラウドファンディングで起業し、高齢者が地域の子育てに参画し、都市型マンション住民がコミュニティをつくり農業を始めるなど、シェアでつながる世界です。生活者のウェルビーイングを重視する家政学(ホーム・エコノミックス)は、持続可能な地域をつくるシェアリングエコノミーとつながっています。

上村 協子
現代家政学科
教授
感性

感覚と感性、暮らしを豊かにしてくれるのはどっち?

感覚とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚といった五感が代表的なものです。きれいな景色を見て癒される、音楽を聞いて楽しむ、香りを嗅いでうっとりする、美味しいものを食べて幸福を感じる、ふわふわを触ってホッとする。いずれも感じた対象を脳が知覚し、認知することで感情や感動が生まれています。人がもつのが感覚だけであれば、危険を察知することしかできません。
感性とは、感じる対象の持つ曖昧な情報を直観的に処理する力ともいわれています。対象を感じ、感動したり、何らかの感情が呼び覚まされたりする感受性が感性なのです。心がたくさん動いている豊かな感性の持ち主は、感動の多い、豊かなくらしを送ることができそうです。

木村 文香
現代家政学科
准教授
ジェンダー(LGBTQ)

女性は男性より運動量が少ないって本当?

「一日にどのくらい動いているか」は、特に健康が気になる中高年齢者にとっては、身近な話題です。厚生労働省による国民健康・栄養調査では、女性の歩数は男性より少なく、かつ、男女とも加齢に伴い減少することが報告されています。
しかし、歩・走行に加え、歩・走行以外の活動を評価できる活動量計を使って、性差と年代差を検討してみると、成人女性では、男性よりも歩・走行時間は短いものの、逆に歩・走行以外の活動時間は長いことがわかりました※。また、歩・走行以外の活動時間は、女性のみが加齢とともに減少していました。このように、特に女性において、家事などの歩数には反映しにくい生活活動は着目すべき行動だと考えています。

※ Tanakaら, 2013

田中 千晶
人間栄養学科
教授

自分の興味にあった学科を見つけよう