【町田図書館】大江文庫所蔵展示を更新しました -江戸時代に描かれた「初がつお」の錦絵-

目には青葉山ほととぎす初がつお

江戸時代の俳人山口素堂の有名な句です。初がつおは、春から初夏にかけて北上してくるかつおで、さっぱりとした味わいを特徴としています。
江戸時代、初物を食べると寿命が延びるといわれ、この時期のかつおは、他の時期に比べ4~5倍の価格でした。 今回は、初がつおについて描かれた錦絵を紹介するとともに、江戸の高級料理店八百善主人が発行した料理書『江戸流行料理通』のかつおのさしみとその調味料を紹介します。

①十二月之内 卯月(うづき) 初(ほと)(とぎす) 三代歌川豊国画 安政元(1854)年

卯月は4月のことですが、季節としては現在の5月上旬頃で夏のはじめでしょう。真ん中の女性はかつおをおろしています。桶に張った水の上でさばいているのは、血合いなどを水で洗い流す必要があったのかもしれません。女性の後ろは、薪と火消つぼがあり、その後ろにはかまどがあるようです。  右の女性は、酒樽(さかだる)から片口に酒を入れ、手前にある「ちろり」でお燗をする用意をしているようです。左手の女性の向こうにみえる朱塗りの膳には、箸とさかづきが用意されています。この台所は、商家などかなり立派な台所と考えられます。窓の外にみえるのはほととぎすでしょうか。

②[初かつお売り]歌川国直画

タイトルが明らかではないため〔 〕で示しています。こちらは、庶民たちがかつおを購入しようと集まっている様子が描かれています。
かつおをさばいているのは、天秤棒でかついで売り歩く、ぼて(棒手)振りまたは振り売りと呼ばれる魚売りです。ここでも桶に水が入っているようです。
後ろにいる人物は、片手に酒徳利を持ち、右手に大根を持っています。量り売りで買った酒を入れているかもしれません。大根は、さしみにそえるけん(剣)やすりおろして薬味とするつもりかもしれません。かつおのさしみには、大根のほか、辛子なども使われました。

 ③『江戸流行 料理通』二編 八百善主人著 文政8(1825)年

本書は、当時高級料理店で知られた八百善の主人を著者として出版された料理書です。1822年から1835年までに1~4編を出版しています。また、当時の著名な谷文晁、北斎(為一)などによる挿絵や文人の太田南畝(蜀山人)、亀田鵬斎などの序文が満載の豪華料理書ともいえるでしょう。
その中で、展示部分は、夏の部にある松魚(かつお)のいくつかの刺身を紹介したものです。調味料は煮返しじょうゆと蓼みそ、いずれでもという意味でしょう。
もとはしょうゆを煮て保存性を高めた「煮返ししょうゆ」は、江戸後期になると、みりんを加えた調味が多くなり、しょうゆにみりんを加えて煮た調味料、あるいは砂糖も加えた調味料に変化していったのかもしれません。