ホーム > レポート > フェアトレード商品を活用したメニュー開発と食育

はじめに
人間栄養学部人間栄養学科実践応用栄養学研究室(加藤理津子)では、2022(令和4)年度から千代田区内を舞台にSDGsをテーマにした社会活動を行っています。
2025(令和7)年度は、大学4年生3名が、若い世代に「もっとSDGsを知って欲しい」、「SDGs活動に参加して欲しい」との想いをもって、フェアトレードをテーマにした活動を企画、運営しました。一年間の活動をまとめたレポートをぜひご覧ください。
フェアトレードとは
フェアトレードとは、「公正な貿易」という意味で、途上国など弱い立場にある生産者や労働者が適切な価格で商品を取り引きできるよう支援する仕組みのことです。
フェアトレード基準の要素には経済的基準、社会的基準、環境的基準があり、消費者がフェアトレード商品を選ぶことで生産者の安定的な収入や安全な労働環境の確保、強制労働や児童労働の禁止、環境や生態系の保護に貢献することができます。つまり、SDGs(持続可能な開発目標)※に貢献する取り組みの一つとして、重要な役割を担っています。
フェアトレードといえばコーヒーが主流でしたが、現在ではチョコレートや紅茶、スパイスなどの食品やコットン製品、花などさまざまな商品があります。みなさんもお店やネットで探してみてください。
※SDGs(持続可能な開発目標)については令和4年度の活動報告をご参照ください。
■活動の概要
2022(令和4)年度に人間栄養学科に所属する1年生の女子学生を対象に実施したSDGsをテーマとしたアンケート(有効回答数132名)において、「行動したいこと・する予定があること(複数回答可)」の問いに対し「節電・節水をする(50.4%、)」、「ごみを出さないようにする(38.2%)」、「フェアトレードの商品を購入する(34.1%)」の順に多い回答が得られました。

一方、「取り組むにあたり、課題(障害)となること(複数回答可)」については、「方法が分からない」と回答した者が最も多く75.6%も存在していました。

そこで、若い世代の興味関心が高かったフェアトレードをテーマに①「SDGsランチ」の開発、②フェアトレードのコーヒーを使ったデザートの販売、③大学1年生を対象にしたSDGsに関する食育を実施しました。
■フェアトレードのコーヒーを使った「SDGsランチ」の開発
コーヒーには苦味、酸味、コク、アロマなどの特徴があり、食事とともに、あるいは食後に楽しむ飲み物として親しまれています。また、生活習慣病予防などの健康効果についても、多数報告されています。
今回、ランチメニューの開発にあたっては、コーヒーの新たな魅力を引き出すために「食べて楽しむコーヒー」をコンセプトに料理に取り入れてみることにしました。


試作してみるとコーヒーは乳製品との相性がよく、また香ばしいアロマが料理にプラスされると味の奥深さが増すことが分かりました。
そこで、コーヒーのアロマを米油に移したドレッシングを作り、さまざまな食材や料理と組み合わせて試食しました。その中から学生が「おいしい」と感じたチキンソテーをメインとすることにしました。
また、鶏肉の焼き方、盛り付けをプロの料理人から学び、自己流との違いに学生たちが感動していました。


そして、学生が提案したものから、さらにブラッシュアップされたランチが出来上がりました。
付け合わせのお野菜は、日比谷パレスのシェフが季節にあわせてアレンジしてくださいました。
完成したランチメニューは、日比谷パレスにて9月に限定販売しました。
学生たちは、お客様に提供できる商品のクオリティに到達するには、技術力をもっともっと磨く必要があることを今回の経験から実感していました。


日比谷パレス
住所:千代田区日比谷公園1-6
電話:03-5511-4122)
URL:https://www.hibiyapalace.co.jp/
■フェアトレードのコーヒーを使ったデザートの販売
本学の千代田三番町キャンパスにて2025年6月15日(日)に開催されたローズ祭(学園祭)でフェアトレードのコーヒーを使ったコーヒーゼリーを販売しました。コーヒーは全てハンドドリップで抽出しました。また、商品を通じてフェアトレードの理解を深めてもらうためポスターを展示しました。

購入者のうち同意を得られた方を対象にアンケート調査をし、100名の回答を分析しました。ほとんどは女性ですが、様々な年代の方の回答を得ることができました。

「購入理由(複数回答可)」のうち最も多かった回答は「おいしそうだったから」でした。

味について「1(おいしくない)」から「5(おいしい)」の5段階で評価してもらった結果、「5」が最も多く、「4」とあわせて84%の方から高い評価を得ました。
また、今後の購入について約半数が「SDGsに役立つなら選ぶ」と回答していますが、「SDGsに関係なく選ぶ」と回答した方も約30%いました。

一方、「SDGsに取り組むにあたり、課題(障害)となること(複数回答可)」では、最も多い回答は「方法が分からない」でした。

栄養・食の専門家として、「美味しいものを提供する」という役割を通じて、人々が自然とSDGsに参加できるきっかけをつくることができると考えました。
■フェアトレードをテーマにした食育
本学の人間栄養学部人間栄養学科に所属する1年生を対象に、SDGs活動への参加を促すことを目的にフェアトレードをテーマとした食育を実施し、フェアトレードの仕組み、フェアトレードの商品を選択することで達成できる社会貢献について具体例を示して説明しました。

食育実施の前後でアンケート調査を行った結果、同意を得られた70名の回答を集計しました。
食育前のアンケートでは、SDGsについて「すでに行動している」と回答した学生は14.1%ですが、「何か行動したいと思っている」学生は半数近い46.5%存在することが分かりました。

SDGsについて「行動したいこと(複数回答可)」の問いに対し、多かった回答は「節電・節水をする」、「リサイクル・リユースをする」でした。すぐにできる行動が選ばれていました。

「SDGsの17の目標のうち、興味がある目標(複数回答可)」には「すべての人に健康と福祉を」、次いで「飢餓をゼロに」を選んだ学生が多い結果となりました。回答者は管理栄養士養成施設の学生であることから、食と健康に関する目標への関心が高いと考えられました。

食育後のアンケートでは、SDGsに貢献したいと思った学生が「とても思った」、「少し思った」をあわせて94%となりました。

また、「フェアトレードの食品を購入したい」や「フェアトレードの食品を購入することでSDGsに貢献できる」に半数以上の学生が「とても思った」と回答しました。

年齢が近く、また管理栄養士を目指す4年生が教えることで、1年生のSDGsに対する理解を深め、興味関心を高められたのではないかと感じました。
しかし、「SDGsに取り組むにあたり、課題(障害)となること(複数回答可)」では、コーヒーゼリー購入者と同様に「方法が分からない」が最も多い回答数でした。

■まとめ
コーヒーゼリー購入者を対象としたアンケート調査や大学1年生を対象とした食育前後のアンケート調査から、日常生活の中で実践しやすい活動をしている人やしたい人が多いことがわかりました。
しかし、両アンケート調査結果から「方法が分からない」といった理由によりSDGsに取り組む行動に繋がりにくいといった課題も認められました。
今後は、栄養・食の専門家である管理栄養士が、人々が自然にSDGsに貢献できるおいしい食を提供すると同時に、一緒に活動する仲間をつくる場の提供をすることや、イベントを一緒に企画するといった支援が必要であると考えました。
この場をお借りして、お力を貸してくださった皆さまに心より御礼申し上げます。
